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光と時間の調和
線から点に・・そして流れる・・
おびただしい映像に浸された時代の宿痾ともいうべきか。絵画においても、新奇なイメージやそれをひねり出すための発想と技術の競い合いばかりが、目下の関心事となった感がする。けれども、そのようにして仕上がった絵画は、束の間の快楽を催させることはあっても、やがては消費する側の際限ない視覚の欲望に追い抜かれてしまうだけだろう。絵画が一時の消費にではなく歴史の風雪に耐え切っていくためには、たとえそれが迂回や逡巡に見えたとしても、イメージや発想や技術の発明競争とは似て非なる射程を備えた探求が不可欠なはずである。若い画家たちを、そして彼らを待望する者たちを、そのような探究や探求を見守ることの大切さに目覚めさせるのは、現に探求を続けてきた画家たち、たとえば浜田浄や井崎聖子の成果に触れることにほかなるまい。
ここでは<表面の背後>もしくは<表面の深さ>という、たった一つの事柄だけに絞って彼らがなし遂げつつある成果に迫ってみたいと思う。それは当然ながら、彼らの絵画の成り立ち方とも密接にかかわっている。
まず浜田は同一の色彩を担った線やストロークの集合を一つの層として、あたかも地層のように別の色彩を担った集合を積み重ねてオールオーバーの画面を作り上げる。
続いて今度はナイフや鉤などを使って出来上がった表面を掘り返し、下層やそのまた下層の色彩を、さらには最下層の画布の地肌を露呈させていくのだ。そんなおびただしい痕跡群が私たちの見ている表面をダイナミックに浮き沈みさせ、あたかもその背後から未知の光がにじみ出してきたかのような情景をつづれ織るのである。
対照的に、井崎の色調は彩霧のようにおぼろげで淡く、その塗りも透けて見える被膜のように薄い。半透明の淡くやわらかいヴェールを思わせる幾条もの色彩流が、音もなく眼前を下っていくかのようだ。そして、それらの流れが接してわずかに重なり合った境界が刻む筋。それは、私たちが見ている表面の見えない厚みを喚起する符牒ともなるだろう。視線を<表面の背後>に回り込ませ、<表面の深さ>を渉猟させた末に、逆送して画面のこちら側へと折り返させるという点では、彼女の絵画も又、浜田の絵画の成り立ちと本質を共にしているといっていい。「絵画とはすべてを受け止める器である」と、ある画家が書き記した名言を思い出す。
そう、浜田と井崎の画面が告げているのも、絵画が無限に向かって開かれた「器」ということなのだ。
三田晴夫(さんだ・はるお)
浜田 浄
井崎 聖子
1937年高知県に生まれる。1961年多摩美術大学卒業。
美術館主催の企画展に出品
「日本現代版画21人」展(1979年・クリーブランド美術館)
「日本の版画」展(1980年・85年・栃木県立美術館)
「近代日本の美術―1945年以後―」展(1982年東京国立近代美術館)
「現代の白と黒」展(1986年・埼玉県立近代美術館)
「グレヘン国際版画トリエンナーレ日本現代版画特別展」(1989年)
「線の表現―目と手のゆくへ―」(1991年・埼玉県立近代美術館)
「リアルな美術・幻影の美術」展(1993年・東京都美術館)
「版画の1979年代」展(1996年・松濤美術館)
「あるサラリーマンコレクションの軌跡―戦後日本の場所―」展(2003年三鷹市美術ギャラリー他)
「高知の美術150年の100人展」(2003年・高知県立美術館)
「アートとともに」(2006年・府中市美術館)
「ブラック&ホワイト―黒の中の黒―」(2006年・東京オペラシティーアートギャラリー)
画廊企画展(グループ展、個展)多数
受賞歴
マイアミ国際ビエンナーレ(1977年)
クラコフ国際版画ビエンナーレ(1978年)
日本現代美術展(1979年・1981年)
西武美術館版画大賞展(1981年)
ジャパンアートフェスティバル'81(1981年)等で受賞する。
文献
2002年浜田浄作品集(1973−2001年)
コレクション
東京国立近代美術館・東京都現代美術館・クラコフ国立美術館・
栃木県立美術館・ブリジストン美術館・上野の森美術館・
大阪府立美術センター・高知県立美術館
1966
東京に生まれる
1989
女子美術大学洋画科 卒業
1991
Bゼミスクール 修了
個展/青山ギャラリー,池袋
1992
「ドローイング倉庫展V」/ヒルサイドギャラリー,代官山
「絵画の展望 part2」/ギャラリー古川,銀座
1993
個展/かねこ・あーとギャラリー,京橋
個展/ルナミ画廊,銀座
1994
個展/かねこ・あーとギャラリー,京橋
1995
個展/ギャラリーNWハウス,早稲田
1996
個展/ギャラリー21+葉,銀座
個展/かねこ・あーとギャラリー,京橋
「アトピック・サイトーオン・キャンプ/オフ・ベース」/東京ビックサイト,有明
1997
個展/ウインドウ ギャラリー,神田
「VOCA'97」/上野の森美術館,上野
1998
個展/ボッシュセンター,神奈川県
個展「解放された視野・U」/ルナミ画廊,銀座
個展 「創ることへの視線Vol.16」/ギャラリー21+葉, 銀座
1999
個展 「Art in the Workplace」/Steelcaseショールーム内,広尾
2000
個展/かねこ・あーとギャラリー2,京橋
「いきる・アート・ともに」/企画:ギャラリールナミ・アート・リソース
2001
個展/かねこ・あーとギャラリー2,京橋
2002
個展/ランドギャラリー,練馬
個展/かねこ・あーとギャラリー2,京橋
2003
個展/かねこ・あーとギャラリー2,京橋
「KOREA・JAPAN MODERN ART FESTIVAL 2003」/ Suwon Art Museum,韓国
 「VOCA'03」/上野の森美術館,上野
2004
個展/かねこ・あーとギャラリー2,京橋
2006
個展/かねこ・あーとギャラリー,京橋
2007
個展/かねこ・あーとギャラリー,京橋
光と時間の調和
線から点に・・そして流れる・・
浜田 浄 X 井崎 聖子
2008年4月10日(木)〜19日(土)
11:30am - 7:00pm (日曜休廊)
DOKA Contemporary Arts
〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12
TEL : 03-3407-3477
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