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美の限界に挑む果敢な創意
静止していた物が動き出すと、だれもがそれに目を向けずにいられなくなるのはなぜだろう。いや、静止状態のそれを眺めていた人でも、動き出したその瞬間、いやおうなく視線が集中し始めることに気づくはずである。おそらくそれは、時間が目に見えないことと関係している。眺める物が静止していると、人は流れている時間を認識するため、その視線を動かない外部の現実から自分の内部に振り向ける。そして、そこに意識の流れという、もう一つの時間の形態を作り出すのだ。その意識の流れ(内部に置き換えられた時間の形態)が動き始めた物によって寸断されると、時間は再び外部の現実に取り戻され、そこを流れていくというわけであろう。
その意味でも、一貫して動く彫刻にこだわり続けた伊藤隆道は、見えない時間の形象化に取り憑かれた夢追い人といってもよい。なるほどキネチック・アートとも呼ばれるように、動く彫刻はいまや現代社会の風物詩となっていて、吹く風や流れる水など自然現象の変化に反応したり、モーター仕掛けで自動運動したりと、多種多様の仕掛けが目を楽しませている。だが、物を動かすこと自体に意識を傾け過ぎるせいか、見えない時間の形象化という高度な域に達していないものが大半だ。繊細にしてユーモラスな形態の、磨き抜かれた一点の曇りなき金属の曲線形に回転運動を与えるだけで、悠久の時間を優美な舞いの軌跡に化身させてきた伊藤隆道を除いては。
悠久の時間といえば、それは日本画家・大野廣子が握りしめてきた表現のモチーフでもなかったろうか。ただし、彼女にとっての悠久の時間とは、山水や花鳥風月に代理表象されるところの、様式の中だけに収まっているような形骸化した時間ではない。活動の拠点をニューヨークに求めただけでなく、自分の関心に触れれば地球上のどこへも飛んでゆく抜群の行動力とフットワークも、人間は「いま・ここ」を実体験することなしに、時間の永遠と触れ合うことも、それを形象化することもできないという意識から促されたものと思われる。たとえば彼女がアフリカの砂漠で、沈む太陽と上る月を同時に目にした体験をことのほか大切にし続けてきたように。
そのような意識を持つ彼女のことだから、日本画専用の顔料で描かれていても、屏風形式にしつらえてあっても、作品が形骸化された伝統のカビ臭さとは無縁のものになるのは当然だろう。前述の砂漠での体験から生まれた掛け軸形式の日月図で、砂漠をはさんだ上下に三日月と太陽を対置させるという大胆奇抜な画面構成をやってのけたのは、ほんの一例である。やがてその体験が、悠久の宇宙というモチーフへと展開していったのも不思議ではない。彼女はしばしば暗黒の地に無数の白いドットをちりばめて銀河や星座を描き出したが、それらは一切の過剰を排したミニマルな表現によって、悠久の時間への思いを澄み切った詩情をたたえて歌い上げていた。
三田晴夫(さんだ・はるお)
伊藤 隆道
大野 廣子
1939
北海道札幌市に生まれる
1962
東京芸術大学美術学部工芸科金工卒業
1962〜72
資生堂会館(銀座)ショウウィンドウディスプレイのデザインを手掛ける
1964
東京アートディレクターズクラブ金賞 '65銀賞 '66銅賞
1966
空間から環境へ展 /松屋・東京
1967
毎日産業デザイン賞
1968
第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 神戸美術愛好家賞
1969
第1回現代国際彫刻展 S氏賞/箱根彫刻の森美術館
エレクトロマジカ'69(銀座ソニービル)/東京
1970
第2回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 朝日新聞社賞
日本万国博覧会 テーマ館 日本館 他5館に出品/大阪
1972
第3回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 神戸市公園協会賞)
1974
第4回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 大賞
1975
第2回彫刻の森美術大賞展 大賞/箱根彫刻の森美術館
第3回長野市野外彫刻賞/長野
沖縄海洋博覧会・三井こども科学館プロデュース/本部・沖縄
1976
第5回神戸須磨離宮公園現代彫刻展
神戸市教育委員会賞、京都国立近代美術館賞)
1978
ホンダ バイク デザインコンペ 優秀賞
1984
ホワイトイルミネーション プロデュース/大通り公園・札幌
1985
個展「伊藤隆道 動く彫刻展 みがかれた1本の線」/東京・札幌・福岡・岡山
1988
ブリスベン国際博'88彫刻展/ブリスベン・オーストラリア
東京都葛西臨海水族園 アートディレクション/葛西・東京)
1993
愛知県・江蘇省友好モニュメント「交流大輪」/南京・中国
1994
第14回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 優秀賞、神戸市民賞
1995
個展「映し出された時間」/箱根彫刻の森美術館
1996
個展 丸の内仲通り アート散歩「伊藤隆道展」/東京
1997
トンヨン国際野外彫刻シンポジウム/統営・韓国
1998
個展「映しだされた時間」/石神の丘美術館・岩手
1999
動く彫刻「舞う・風・ひかり」設置/島根県立美術館
個展「回転する時間」/高岡市美術館
2000
オペラ「あだ」(舞台美術)/芸大奏楽堂
個展「伊藤隆道展」(作品),Jo Hyun Gallery/釜山・韓国
2001
国際野外彫刻シンポジウム/北京・延慶・中国
2002
邦楽舞台「熊野の物語」(舞台美術)/芸大奏楽堂
2003
邦楽舞台「竹取物語」(舞台美術)/芸大奏楽堂
2004
個展「伊藤隆道・動的空間芸術展・上海」/上海・中国
邦楽舞台「賢治宇宙曼荼羅」/奏楽堂・芸大
高雄国際鉄鋼彫刻シンポジュウム/高雄・台湾
2005
邦楽舞台「スサノオ」
オペラ「スペインの時」「子供と魔法」/奏楽堂・芸大
動く彫刻「ひかり・空に舞う」余山・月圓園/上海・中国
2006
退任記念「伊藤隆道展」/芸大大学美術館
光・動き「伊藤隆道展」/北海道立近代美術館
ピエモンテ国際彫刻展/トリノ・イタリア
光・動き「伊藤隆道展」/桂林愚自楽園・中国
2007
光・動き「伊藤隆道展」/上海国際彫刻公園(月圓園)・中国
2008
「-悠久の空間- 伊藤隆道・大野廣子」展 DOKA Contemporary Arts 企画/東京
現在
東京芸術大学名誉教授
東京に生まれる。2004年からNew York にスタジオを構える。
1982
武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業、卒業制作優秀賞
1984
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース修了 修了制作優秀賞
1985
みゆき画廊(東京)
1986
川端龍子賞展優秀賞
1988
玉屋画廊(東京)
1992
ギャラリーアートポイント(東京)
ギャラリーピクチャーズ(東京)
1993
目黒雅叙園アートプライズで、目黒雅叙園美術館賞、一般審査特別賞
1995
大野廣子画集刊行('98 増刷版刊行)
本間美術館(山形)
1996
横浜高島屋(同'00,'06 神奈川)
1997
日本橋高島屋(同'98,'02,'05 東京)
1998
JM art centre Yebo Gallery(ナミビア)
1999
Radio House Gallery(ニューヨーク)
2000
日本テレビ「美の世界“大野廣子”」が放送される
2001
NHK「美の朝“大野廣子”」が放送される
紺綬褒章受章
2002
Kalart Gallery(サンフランシスコ)
2003
東京大学安田講堂総長応接室の為の作品を2002年に依頼され完成、収蔵 画題:「ニュートンのリンゴ小石川植物園」
Hakone Gardens(シリコンバレー・サラトガ)
Iwasawa Oriental Art(シリコンバレー・ロスガトス)
2005
Desbrosses Gallery(ニューヨーク)
2006〜08
ミキモトNewYorkに小品展示(ニューヨーク)
2006
コロンビア大学のコンサートに作品展示(ニューヨーク)
2007〜08
Juvenal Rai Studio, Open Studio(クイーンズ・ニューヨーク)
2007
Asian Contemporary Art Fair New York(Susan Eley Fine Arts,Pear92,ニューヨーク)
Bridge Art Fair Miami(Susan Eley Fine Arts,Catalina Hotel,マイアミ)
"land[e]scape" Curated by Eric Shiner,Japan Society 100周年記念展"Making Home" の関連の展覧会(Onishi Gallery, ニューヨーク)
2008
Red Dot Art Fair New York(Susan Eley Fine Arts,Park South Hotel,ニューヨーク)
"Implant" Curated by Jodie Jacobson(UBS Art Gallery, ニューヨーク)
「-悠久の空間- 伊藤隆道・大野廣子」展 DOKA Contemporary Arts 企画/東京
-悠久の空間-
伊藤隆道・大野廣子
2008年11月21日(金)〜29日(土)
11:30am - 7:00pm (日曜休廊)
DOKA Contemporary Arts
〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12
TEL : 03-3407-3477
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