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既成の美意識や時流に抗する志
勝手な推測でしかないが、自作の画題を「淤能碁呂(onokoro)」と呼ぶようになった時点から、岡田忠明には自身の絵画の向かうべき道が、はっきりと見えていたに違いない。自分の意識を規定してきた絵画史上の知を一切ご破算にして、白紙状態から自前の絵画をつくり直していこうという覚悟のようなものが。「淤能碁呂」とは「古事記」の国生み神話に出てくる、イザナギとイザナミが海水をかき回した矛の先から、塩がしたたり落ちて誕生した最初の島の名である。その名を冠した絵画には、先達である西洋絵画への対抗心のようなものも感じられるが、より共感すべきは、あくまでも絵画の原点に立ち戻ろうとする自覚の方であろう。
大理石の粉末や炭酸、硫酸のカルシウム、諸顔料を膠で溶いた色材づくりに始まり、無から何かが始まるような天地創造を思わせる厳かな画面づくりに至るまで、そのことは「淤能碁呂」シリーズの作品群から如実に見て取れる。彩色された自然木をはり付け、白と紺による陰陽的構造をはらんだ初期作品は、とりわけそんな感慨に誘う。岡田の軌跡は、画面から余分な要素を振り捨てながら、ここ一両年に発表された対照的な二系列へと展開してゆく。一方では、赤の線を仲立ちした白と黒の矩形色面の対比が静寂の中にもはりつめた緊張感を漂わせ、他方では、細い線形が空間を胎動させて、そこらに発生の気をみなぎらせていた。さて、今回はどうなるか。
このところ志ある彫刻家たちによる自主運営の展覧会の動きが、にわかにクローズアップされてきた。マンガやアニメに刺激を受けた「かわいい」、そしてちょっと不気味でシュールなキャラクターを描いた絵画の流行。それが不当なことに彫刻にも及んで、フィギュア系の流行と一線を画する真摯な造形が相手にされなくなったからである。時代に流行があるのは当然としても、世の中すべてがそれに染まってしまうのはやはり空恐ろしい。そうならないためにも、フィギュアにはない彫刻の醍醐味を人々に伝えるべく、ここはぜひとも彫刻家たちに踏んばってもらわねばならないところだ。DOKAでは今年2度目の発表となる、石彫家の高濱英俊にも。
もちろん高濱は、今回の会場でも彫刻の本領が奈辺にあるかを教えてくれるだろう。石の塊を割り、彫りえぐり、研ぎ磨く手仕事の反復の中にしか、それが受胎しないという真実を。この彫刻家が「水」の流動性を形象化の柱にすえてきたことについては、前回の発表時に言及したのでここでは繰り返さない。だが、どこか人体を思わせもしたり、動植物のようでもあったりする、可変的かつ有機的なモルフォロジー(形態学)の特異さは、何度指摘してもし足りないくらいである。その意味で高濱は、古典的均整美は自分の目指すべき世界でないとして流動的形態にこだわった現代彫刻の開拓者、ヘンリー・ムーアの衣鉢を継ぐべき一人なのかもしれない。
三田晴夫(さんだ・はるお)
岡田 忠明
高濱 英俊
1948
埼玉県生まれ
1974
レスポアール展・スルガ台画廊(東京・1976、1979)
1975
東京芸術大学大学院油画科修了 大橋賞受賞
1982〜1985
ING-82(紀伊国屋画廊・鎌倉画廊・ギャラリー21 東京)
1983
北関東美術展(栃木県立美術館)
1984
岡田忠明展(埼玉県立近代美術館)
岡田忠明展(ギャラリー21 東京)
1988
現代美術120人展(埼玉県立近代美術館)
1989〜2007
コンテンポラリーアートフェスティバル[CAF展](埼玉県立近代美術館)
1991〜1995
EXIT展(ぎゃらりいセンターポイント 東京)
1991
枕崎ビエンナーレ風の芸術展(九州 枕崎)
1994
第62回独立展 奨励賞受賞(東京都美術館)
1995〜1999
岡田忠明展(ギャラリー八重洲 東京)
1995
第63回独立展 独立賞受賞(東京都美術館)
1996
第64回独立展 会員推挙(東京都美術館)
1998
文化庁現代美術選抜展(地方巡回)
1999〜2008
彩象'99(埼玉県立近代美術館)
1999
'99日韓絵画交流展(ソウルギャラリー 韓国 ソウル)
99 KOREA・JAPAN ART FESTIVAL(松披美術館 韓国 ソウル)
2000〜2008
岡田忠明展(銀座ぎゃらりいサムホール 東京)
2000
ALL ARTS展(GALLERY UNICORN 埼玉)
2001
1st Contemporary Artists of JAPAN-BANGLADESH(DHAKA Zanul Gallery TOKYO Cyuwa Gallery)
2002〜2006
新鋭8つの眼展(ギャラリー風 東京)
2002
4人展「4人の視座」江田豊 岡田忠明 白野文敏 松永久(銀座ぎゃらりいサムホール 東京)
能と現代美術のコラボレーション ヨーロッパ公演(観世流能楽師 梅若六郎氏とのコラボレーション)(オータン市立劇場 フランス・サンカントネル王立美術館 ベルギー・アルクマール ドゥ フェスタ市立劇場 オランダ)
文化庁派遣芸術家在外研修員にて渡仏
2008
「-黒と白の詩情- 岡田忠明・高濱英俊」展 DOKA Contemporary Arts 企画/東京
現在
独立美術協会会員 日本美術家連盟会員 埼玉県芸術家協会会員(招)
1957
熊本に生まれる
1983
東京藝術大学彫刻科卒業
瀧富士賞
1985
東京藝術大学大学院修了
新制作展
1989
ヘンリームーア大賞秀作展
現代日本彫刻展
現代九州彫刻展
神奈川県美術展
カジマ彫刻コンクール
野外の表現展
ユーモア彫刻展「奨励賞」
OPEN AIR EXHIBITION IN WANPAKU1989
新制作展
1990
ロダン大賞優秀作品展
須磨離宮公園現代彫刻展エスキース展
個展(ギャラリー山口)
昭和記念公園野外彫刻展
個展(銀座熊本館)
五木の子守唄彫刻コンクール「準大賞」
オブジェ東京展
新制作展
1991
風のビエンナーレまくらざき
石のさとフェスティバル「タダノ賞」
国際彫刻シンポジウム(ハンガリー)
ロダン大賞優秀作品展
路上美術館「池袋」
野外の表現展新制作展
1992
ストーンミュージアム石の彫刻展(以後毎年)
現代日本具象彫刻展
木内克大賞野外彫刻展
野外の表現展
個展(ウインドウギャラリー)
1993
風のビエンナーレまくらざき
富士見高原国際彫刻シンポジウム
日向現代彫刻展
新制作展
1994
モダンアート展 (以後毎年2001年迄)
宮崎現代彫刻空港展
個展(原宿ストーン G)
日向現代彫刻展
モダンアート明日への展望展 <俊英作家賞>
1995
宮崎現代彫刻空港展
鳩山野外彫刻展
山口大理石現代彫刻展
荒川リバーアートコンテスト<特賞>
個展(G 和田)
モダンアート明日への展望展 (以後毎年99年を除く 2003年迄)
1996
ハウスクエア横浜ウィズアート96展
富士火災アートスペース
個展(ときわ画廊)
国際彫刻シンポジウム
1997
個展(G 青羅)
モダンアート展 <奨励賞>
宮崎現代彫刻空港展
1998
宮崎現代彫刻空港展
モダンアート展
個展(ときわ画廊)
1999
個展(スペース S)
ロックハートシンポジウム
グループ展(すどう美術館)
2000
空間との対話展(熊本県立美術館)
子供美術館(熊本県立美術館)
2001
Private Landscape 展(Land ギャラリー)
2人展(ギャラリー INOS)
個展(奈義町現代美術館, 大丸東京店, スペース S)
オンザパレット展(建築会館)
2002
個展(ギャラリー INOS)
米子彫刻シンポジウム
AACAシナジー展
2003
ドローイング展(ギャラリー52)
国際彫刻シンポジウム(牟礼)
個展(ギャラリー INOS)
2004
大王のひつぎプロジェクト
AACAシナジー展
日中現代美術展(上海)
2005
AACA シナジー展
個展(ギャラリー INOS)
2006
アートフェア(上海)
AACAシナジー展
アルスクマモト展(熊本市現代美術館)
2007
「上田のり子×高濱英俊展」DOKA Contemporary Arts 企画/東京
「高濱英俊×尾形純展」DOKA Contemporary Arts 企画/東京
「馬と近代美術」展(目黒区美術館)
2008
最上壽之+高濱英俊「イノチノウタ:アソブカタチ」DOKA Contemporary Arts 企画/東京
岡田忠明+高濱英俊「-黒と白の詩情-」DOKA Contemporary Arts 企画/東京
2012
高濱英俊・小山佐敏展「生命と水のちから」(県民百貨店・熊本、浜屋・長崎)DOKA Contemporary Arts 企画/東京
CAF.N展(埼玉県立近代美術館)
2013
August Stone展(熊本空港)
米子彫刻シンポジウム作家展(米子高島屋)
+7展(上海ギャラリー339)
2014
濱英俊彫刻展(熊本不知火美術館)
濱英俊、金徳姫展(大韓民国日本国大使館シルクギャラリー)
2015
高濱英俊展「水のかたち」(DOKA Contemporary Arts)
2016
高濱英俊 彫刻展(DOKA Contemporary Arts)
2017
高濱英俊展「水のかたち」(渋川市美術館)
-黒と白の詩情-
岡田忠明・高濱英俊
2008年10月17日(金)〜25日(土)
11:30am - 7:00pm (日曜休廊)
DOKA Contemporary Arts
〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12
TEL : 03-3407-3477
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