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対立から総合へ向かう二つの営為
芸術には有機的と幾何学的、あるいは具象的と抽象的という二つの対照的な型があるとは、多くの先達が指摘してきたことである。そのように記述されるほど、芸術の二つの型は、いずれか一方が他方よりも際立つような時代を通して、一種の確執を繰り返してきたといってもいい。たとえば有機的・具象的な型が時代を一色に染め上げたルネサンス期、幾何学的・抽象的な型がそれに取って代わった20世紀というように。画家の岡田忠明と彫刻家の湯村光が後者の型を自己の芸術の基盤としているのも、彼らが同じ20世紀半ばに生を受けた時代の嫡子であったことと無関係ではないだろう。しかし、ここで留意しなければならないのは、にもかかわらず彼らが決して時代の型を鵜呑みにしてはいないこと、それに芸術創造のすべてを任せきってはいないこと、の方ではないだろうか。
というより両者の作品が如実に証明しているのだが、彼らはそこに、時代を覆った幾何学的・抽象的な型に対する懐疑の念を潜ませているようにさえみえる。かつて読んだ仏小説家アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの物言いを借りるなら、あえて表現をどっちつかずの、二つの型の「中間領域のもの」もしくは「二重のもの」へと差し向けているかのように思われるのだ。なるほど岡田忠明の画面はしばしば矩形に、つまり幾何学的な領域に分割されているけれども、だからといってそれは、理知の光でくまなく構造をあぶり出そうとする原理一辺倒の探究とはまるで違う。そもそも面の塗りが均質一様でないばかりか、不定形の染みや向きの異なる複数の線分を浮遊させたりして、幾何学的・抽象的な型が失った有機的な生動感を見事に画面に召喚しているからである。同じような印象は、御影石を素材とする湯村光の彫刻からも受け取れるだろう。
それは、まぎれもなく幾何学的・抽象的な基盤の上に立っていながら、その型が強いる純一性からするりと身をかわしているような趣とでもいおうか。岡田忠明が染みや線分などの自在な介入によって、幾何学的・抽象的な型に付きまとう重力を振り払っているように、湯村光も主として二つの構成法を介して、その彫刻に有機的なダイナミズムを呼び込んでいる。一つは断裂した複数の部分を微妙にずらしながら接合して単一の全体をまとめ上げていくそれであり、また一つは磨き抜かれてちり一つない鏡の表面を思わせるつるんとした研磨面と、ごつごつした起伏が波打つむきだしの被断面を対比させるというそれである。軽妙かつユーモラスで、いささかスリリングな気配もはらんだ形態といい、そこから染み出してくる生の感触といい、石という素材を知り抜いた手わざの妙は格別というほかはない。岡田忠明も湯村光も、芸術の二つの型のいずれかに帰依することなく、むしろ波打ち際に身を置いて、二つの型の総合化を探り続けているのではあるまいか。
三田晴夫(さんだ・はるお)
岡田 忠明
湯村 光
1948
埼玉県生まれ
1974
レスポアール展・スルガ台画廊(東京・1976、1979)
1975
東京芸術大学大学院油画科修了 大橋賞受賞
1982〜1985
ING-82(紀伊国屋画廊・鎌倉画廊・ギャラリー21 東京)
1983
北関東美術展(栃木県立美術館)
1984
岡田忠明展(埼玉県立近代美術館)
岡田忠明展(ギャラリー21 東京)
1988
現代美術120人展(埼玉県立近代美術館)
1989〜2007
コンテンポラリーアートフェスティバル[CAF展](埼玉県立近代美術館)
1991〜1995
EXIT展(ぎゃらりいセンターポイント 東京)
1991
枕崎ビエンナーレ風の芸術展(九州 枕崎)
1994
第62回独立展 奨励賞受賞(東京都美術館)
1995〜1999
岡田忠明展(ギャラリー八重洲 東京)
1995
第63回独立展 独立賞受賞(東京都美術館)
1996
第64回独立展 会員推挙(東京都美術館)
1998
文化庁現代美術選抜展(地方巡回)
1999〜2008
彩象'99(埼玉県立近代美術館)
1999
'99日韓絵画交流展(ソウルギャラリー 韓国 ソウル)
99 KOREA・JAPAN ART FESTIVAL(松披美術館 韓国 ソウル)
2000〜2008
岡田忠明展(銀座ぎゃらりいサムホール 東京)
2000
ALL ARTS展(GALLERY UNICORN 埼玉)
2001
1st Contemporary Artists of JAPAN-BANGLADESH(DHAKA Zanul Gallery TOKYO Cyuwa Gallery)
2002〜2006
新鋭8つの眼展(ギャラリー風 東京)
2002
4人展「4人の視座」江田豊 岡田忠明 白野文敏 松永久(銀座ぎゃらりいサムホール 東京)
能と現代美術のコラボレーション ヨーロッパ公演(観世流能楽師 梅若六郎氏とのコラボレーション)(オータン市立劇場 フランス・サンカントネル王立美術館 ベルギー・アルクマール ドゥ フェスタ市立劇場 オランダ)
文化庁派遣芸術家在外研修員にて渡仏
2008
「-黒と白の詩情- 岡田忠明・高濱英俊」展 DOKA Contemporary Arts 企画/東京
2009
平面と立体の調和〜岡田忠明・湯村光展(DOKA Contemporary Arts)
現在
独立美術協会会員 日本美術家連盟会員 埼玉県芸術家協会会員(招)
1948
鳥取県に生まれる
1971
東京芸術大学彫刻科卒業
渡仏国立パリ美術学校に留学(72年まで)
1970
個展(アテネフランス文化センター画廊・東京)
1971
個展(鳥取市民会館)
1973
個展(アテネフランス文化センター画廊・東京)
1974
個展(サトウ画廊・東京)
1975
第30回行動美術展(以降毎年出品、奨励賞2回・会友賞・安田火災美術財団奨励賞・行動美術賞受賞)
1976
第12回現代日本美術展(東京都美術館・京都市美術館)
個展(サトウ画廊・東京)
1977
第13回現代日本美術展
1978
個展(サトウ画廊・東京)
1983
個展(ギャラリー山口・東京)
第10回現代日本彫刻展、神戸須磨離宮公園賞受賞(宇部)
1984
第15回日本国際美術展(東京都美術館・京都市美術館)
1985
個展(ギャラリー山口・東京)
第4回ヘンリー・ムア大賞展、優秀賞受賞(美ヶ原高原美術館)
第11回現代日本彫刻展
国営昭和記念公園野外彫刻展(86年・87年にも出品・東京)
1986
第5回安田火災美術財団奨励賞展・優秀賞受賞
第16回日本国際美術展
第10回アジア競技大会記念'86彫刻大展(ソウル)
第10回神戸須磨離宮公園現代彫刻展・土方定一記念賞受賞
1987
第5回ヘンリー・ムア大賞展、優秀賞受賞
第12回現代日本彫刻展、神奈川県立近代美術館賞受賞
第15回長野市野外彫刻賞受賞
1988
第11回神戸須磨離宮公園現代彫刻展・京都国立近代美術館賞受賞
1989
イマジン'89展(ロスアンジェルス)
第13回現代日本彫刻展・宇部興産株式会社賞受賞
1990
第12回神戸須磨離宮公園現代彫刻展
個展(現代彫刻センター・東京)
1991
第10回安田火災美術財団奨励賞展・銀賞受賞
第2回石の彫刻国際シンポジウム(香川)
第14回現代日本彫刻展・東京国立近代美術館賞受賞・埼玉県立近代美術館賞受賞
1993
第24回中原悌二郎展優秀賞受賞
1994
彫刻家の素描展(旭川市彫刻美術館)
1999
個展(ギャラリーせいほう・東京)
2000
第5回倉吉緑の彫刻賞受賞・緑の彫刻賞受賞記念展・加藤昭男・毛利武士郎・湯村光(倉敷博物館)
2002
オランダと日本の画家彫刻家交換展(フロマンス画廊・アムステルダム)
個展(ギャラリーせいほう・東京)
2003
ライ・アートフェア・アムステルダム
2004
彫刻三人展(始弘画廊・東京)
彫刻家の素描展(旭川市彫刻美術館)
ライ・アートフェア・アムステルダム
個展(フロマンス画廊・アムステルダム)
アート トゥエンテ(オランダ)
中日現代芸術展(上海多倫現代美術館)
2005
バウメイスター プロジェクト展(オランダ)
ライ・アートフェア・アムステルダム
ミーティング ポイント ジャパン(オランダ)
個展(ギャラリーせいほう・東京)
2006
向井良吉と6人展
2007
ギャルリー・ムーラン・ドゥ・ロー(フランス)
コンバージェンス国際美術展(ラリカラ アカデミー・インド)
2008
個展(ギャラリーせいほう・東京)
2009
平面と立体の調和〜岡田忠明・湯村光展(DOKA Contemporary Arts)
平面と立体の調和〜岡田忠明・湯村光 展
岡田忠明・湯村光
2009年10月16日(金)〜23日(金)
12:00pm - 6:00pm (日曜休廊)
DOKA Contemporary Arts
〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12
TEL : 03-3407-3477
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