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深い余情をたたえた色彩詩
 東アジア温帯モンスーン地域にあって、和紙は古くからこの弧状列島の風土とともにあり、そこに暮らす人々の感性を育んできた用材であった。それがゆえに和紙は、弧状列島の美術文化の成り立ちやあり方にも有形無形の影響を及ぼし続けたといってよい。しかし、浜田澄子が現代の美術界において積極的な和紙の使い手たろうとしたのは、ただひたすら日本特有の文化的遺伝子を尊重しようとする伝統派とは別の意識からである。「キャンヴァスは絵具を表面に滞留させるが、和紙は水を吸い込む砂のように色材を留めることがない。そんな浸透性が画面に透明感や奥深さを与え、キャンヴァス絵画にはない美質に自分を導いてくれた」と、画家自身が述懐してくれたように。
 それを聞いた時、かつて同じように和紙に行き着いた画家のことが、ふと思い返された。やはりキャンヴァスやパネルの表面にちぎった和紙を貼り重ね、墨や水彩、アクリリックなどで彩色する作法を続ける年長世代の堀浩哉である。彼もまた、絵具がキャンヴァスの表面にせき止められ、面上に広がって盛り上がるしかない油絵に違和感を覚え、奥方向への色彩の染み込みを可能にさせる和紙の使用によって表現の活路を切り開いた一人であった。もちろん両者の作風はまるで違うのだが、自身が感受した物の感触や空間の質を、画面そのもののマチエール(絵肌)に同化させようとする意識や方向性は共通していよう。ともあれ浜田が伝統的な美意識に溺れることなく、あらゆる可能性に対して自身を開こうとした過程で和紙に遭遇したことを、ここでは重視しておきたい。
 浜田の手でちぎられ、覆い重ねられた和紙片の群れには、まず墨でトーンが付されてからグリーンやブルーなど種々の色彩に染まっていく。繊細微妙な明暗や濃淡をはらんで移ろう色調の美しさといい、和紙片群の重なりが刻む起伏や進退のダイナミズムといい、その画面の表情の多彩さ、彫りの深さは見る者を魅了してやまないだろう。名指し得る具体的な対象物が何一つ描かれているわけではない画面なのに、もう一つの自然、もう一つの世界と呼んでみたくなるような余情が、そこかしこにあふれ返っている。きっと新作の画面からも、深まりゆく秋の気配のひとひらひとひらをすくい取ったかのような色彩詩が心ゆくまで味わえるはずである。
三田晴夫(さんだ・はるお)
浜田 澄子
1957
横浜に生まれる
1984
創形美術学校造形研究科卒業 (個展賞)
1993
《第11回上野の森美術館大賞展》
1993
◆松濤美術館賞受賞《松濤美術館公募展》 松濤美術館 (渋谷)
1994
《第4回紙わざ大賞展》 (静岡県.島田市)
1994
《And Galleryの眼Vol.2アートショップ現代美術の小品》And Gallery (豪徳寺)
1996
《第25回現代日本美術展》
1997
◆特別賞受賞 《第4回水彩展OHARA》大原美術館 (千葉県.大原市)
1998
◆佳作賞受賞 《`98公募第11回全国和紙画展》 (岐阜県.美濃市)
1998
《 現代墨への挑戦`98東海テレビ墨画展》 (愛知県.名古屋市)
1998
《第2回雪舟の里 総社 墨彩画公募展`98》 (岡山県.総社市)
1998
◆奨励賞受賞 《第5回水彩展OHARA》
2001
《和紙-12の様相2》GALLERY FRESUKA (新宿),2000
2001
Galerie Mjille Feuills. (下北沢)
2002
《Confusion》 表参道画廊 (表参道)
2003
《多摩秀作展》 青梅美術館 (青梅市)
2003
《Firld》 K,s Gallery (銀座)
2003
《With BEETHOVEN SONATSA NO.14 MOONLIGHT,1st,3rd》
2004
《Mental Scenery》
2005
◆新日本造形賞受賞 《第13回プリンツ21グランプリ展》 (銀座、世田谷美術館)
2005
《ニューイヤー響展2005》新世紀現代美術協会企画 画廊響き (銀座)
2005
《SILENT BLUE》 SPCギャラリー (茅場町)
2005
《white dimension black demension》 宇フォーラムKV21美術館 (国立)
2006
《日韓美術交流展》 神奈川県民ホール
2006
《第6回熊谷守一大賞展》 (岐阜 中津川市)
2006
《spiral rose》 PLATFORMSTUDIO (銀座)
2007
《SANSUI 》 Gallery≠Gallery (茅場町)
2007
《holly zone≒horizon》 galleria grafica (銀座)
2008
◆特選賞受賞 《第32回神奈川県美術展》 神奈川県民ホール (横浜市)(2007,2005,2000,1999,1998,1997,1996)
2008
◆入賞 《2008アジアデジタル大賞展》九州大学感性融合創造センター(福岡)
2008
《bule dream》 ウィリアム.モリス (渋谷)
2009
《locos of mind》 Gallery and Cafe DODO (府中)
2010
◆佳作賞 《第23回全国和紙画展》
2011
◆金賞 《第24回全国和紙画展》
2011
《第47回神奈川県美術展》 神奈川県民ホール
2011
《SANSUI +square jewels》 中和画廊 (銀座)
2011
《秋冷に舞う 色彩と光りの中へ》 DOKA Contemporary Arts (青山)
・・・秋冷に舞う色彩と光りの中へ・・・
浜田 澄子 展
浜田 澄子
2011年11月18日(金)〜26日(土)
13:00 - 19:00 (最終日17:00迄)
休廊:日・祝
DOKA Contemporary Arts
〒107-0062 東京都港区南青山7-1-12
TEL : 03-3407-3477
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